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私たちは焼きそばをテーブルに運んで二人で手を合わせた。
ガクちゃんは「いただきまーす」と、子供みたいに慌てて焼きそばに箸を付けた。
妹の件に安堵したのか、目の前の焼きそばがいつも以上に美味しそうに見えるのか、彼の笑顔はいつもよりも無邪気に見える。
「カコ、食べねーの?」
私は彼を見ていたせいで箸が止まっていた。
「ううん、食べる。ガクちゃんがあんまり美味しそうに食べるから、何だか面白くってつい見ちゃった」
「だってホントに旨いもん」
ガクちゃんは笑って一口分以上はありそうな麺を大きな口にかき込んだ。
「おかわりあるから慌てないで」
私はそう言って最初の一口を口に入れた。
けれど、私の顔は彼のようにホクホクと綻んだりはしなかった。
頭の中が彼のことでいっぱいだった。
今日、彼女と出会って話をしたことで、
今まで目を背けてきたことが一気に現実味を増したように感じた。
ガクちゃんとの終わりが
目の前にちらつき始めていた。
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