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「カコ、こっち来いよ」
俺はおもむろに彼女を呼んだ。
「何? 食器拭かなきゃ」
「自然乾燥。ほら、早く来いよ」
「どうしたの?」
少し強引に呼ぶとカコは首を傾げながらやって来た。
「カコ、今日、金魚に餌やった?」
俺は金魚鉢を覗き込んで床に寝そべった。
「あ、やってないや」
彼女も俺の隣に寝転んだ。
俺が金魚の餌のパックを手にすると、金魚は餌を入れる前からもう水面で口をパクパクと開閉している。
「こいつら本気で欲しがってるな」
俺は細かい餌を人差し指と中指でひと摘まみすると、水面ギリギリまで指を近付けて金魚を観察した。
近付いた指先に金魚は先程よりも激しく口を開けている。
「ガクちゃん、早くあげてよ。何だか見てるこっちが苦しくなる」
「そうか?」
俺が指先を払って水中に餌を撒くと、金魚は水面に這う餌を必死に追いかけている。
「金魚もお預けされたらその後威勢がいいんだね」
カコがクスクス笑う。
「『金魚も』って。カコも?」
「え?」
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