それぞれの一日

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鏡の前に立つと、思わず声をあげそうになった。 鏡の中の自分は想像以上にすさんだ顔つきだった。 肌はカサカサに乾燥しており、眉毛もマスカラもすっかり落ちて、目の下に黒ずみができている。 三十路目前の女にとって、たった一日の怠りがどれほど肌にダメージを与えるのかは重々承知しているつもりだ。 私は自分の頬を撫でながらそれが何の慰めにもならないことに肩を落とした。 それでも顔を洗うと気持ちがいい。 私は夕べの分も肌にたっぷり化粧水を含ませて肌への罪滅ぼしを行うと、優しい匂いの漂うキッチンへ戻った。 「カコ、今日は仕事行けるのか?」 彼がご飯茶碗にお粥を盛って、テーブルへ運びながら言った。 「うん、行くよ」 「大丈夫なのか?」 「大丈夫。職場でも健康だけが取り柄だって思われてるから。そんなことよりガクちゃんは? ガクちゃんはここに居て大丈夫なの? 仕事は?」 「俺は朝ゆっくりだし、心配ねーよ」
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