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「そうか? 似てるよ。だからこいつ、可愛いじゃん」
ガクちゃんが金魚鉢の中をじっと見つめる。
私は無邪気に笑う彼を見て反論するのも馬鹿らしくなった。
ガクちゃんは私がいつもしているように、金魚鉢の側面を指で叩いて金魚を呼んだ。
「そんなデカい目して……いったい何を見てるんだよ?」
黒い出目金は尾ひれを大きく振って金魚鉢の水面に波紋を生むと、彼の正面で止まった。
もしかすると、ガクちゃんの言うとおり、この小さな金魚は私に似ているのかもしれない。
「あなたのこと……見てるのよ」
私は金魚の代わりにそう答え、彼の横顔に微笑んだ―――。
――――― Fin ――――――
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