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私は彼の腕の隙間から
部屋の中に伸びる一つに重なった二人の影を見つめていた。
すると、彼の腕に一段と力がこもった。
「……嘘だ」
「嘘じゃないよ……。もう全部話したよ」
私は声色を明るくした。
そして、彼の腕に手を掛けてその腕を外そうとすると、彼の片手がそれを遮り、私をさらにきつく抱き寄せる。
「俺はまだ……言ってない」
彼の言葉に私の全身が緊張で硬くなり、身体の表面を鳥肌が覆いつくす。
私の耳には苦痛に乱れる彼の息遣いが聞こえた。
「カコ……。俺は……カコが好きだよ」
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