エピローグ

2/8
前へ
/39ページ
次へ
ある休日の昼下がり、 私のアパートにはいつものように彼がやって来ていた。 あれからもうひと月ほどが経っていた。 私はガクちゃんのおかげで 今もこうして 彼と一緒にいることが出来る。 あの日のことは 私は一生忘れないだろう。 だけど、やっぱり、料理の味はよく思い出せない。 ガクちゃんは大丈夫だと言ったけど、 普段使い慣れているはずの箸でさえ、 手元がおぼつかず、上手く使いこなせなかった。 それ以前に、 胸がいっぱいで、 空腹であったことも忘れていた。 今、ガクちゃんはキッチンでコーヒーを淹れている。 私は午後の日差しを浴びながら金魚鉢の前で寝転んでいた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

634人が本棚に入れています
本棚に追加