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私は金魚鉢を指先で叩き、金魚を無言で呼んでいた。
「何浮かない顔してんだよ?」
キッチンからコーヒーカップを手にした彼がやって来る。
ガクちゃんはローテーブルにカップを置くと自分も私の隣に寝そべった。
「別に……何でもないんだけどね」
「嘘つけ」
彼は私を抱き寄せ、仰向けになった自分の上に私を乗せた。
私は彼の広い胸でうつ伏せになる。
彼の胸に頬を寄せると、彼の鼓動が聞こえてくる。
私はしばらくその鼓動を聞きながら自分の呼吸を重ねていた。
「私だけ……幸せになってもいいのかな……と思って」
私はため息をつくように小さな悩みを吐き出した。
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