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「カコ」
彼は肘をついて金魚鉢に目をやった。
「金魚すくいの時、俺が何でこいつに目をつけたか教えてやろうか?」
「……あ、そうだったね。何でなの?」
私は改めて涙を拭い、腕を組んで顎を乗せると彼と同じように金魚鉢を正面から覗き込んだ。
「こいつがカコに似てたから」
「私に?」
私は思わず金魚鉢からガクちゃんに視線を移した。
「そう。似てねえ? でっかい目して黒い髪ひらひらさせてさ」
「……似てないよ」
目の前を泳ぐのは黒い出目金だ。
私は彼に似ていると言われて少し心外で、わずかに唇を尖らせた。
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