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私は視線を上げることができなかった。
「カコ」
彼は諦めずに私を呼ぶ。
そして、私を待っていた。
彼の手のひらが私の肩を優しく揺さぶる。
「……カコ……」
先程よりもかすれた彼の声に、
私は耐えることが出来ずに視線を上げた。
その視線をガクちゃんがしっかりと捕まえる。
捕まえて……
……離さない。
私の瞳は観念し、白旗を上げる。
今まで何度も感じてきた瞼を突き上げる熱にすべてを委ねると、
私の目から
大粒の涙が流れ落ちた。
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