金魚の涙

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ここのところガクちゃんは忙しいらしく、会う回数は減っていたものの、 彼は忙しい中、電話やメールで連絡をくれた。 「無理しなくっていいのに……」 私はそんな独り言を呟きながら、スマホの画面で彼の名前を見られるのがうれしくてたまらなかった。 そして、金曜の夜、 私がもうベッドに身体を入れかけた時だった。 彼からの着信があった。 彼は日曜日に会いたいと言ってきた。 『カコ、ちょっとだけかしこまって出掛けようぜ。いい店を予約できたから』 もう時間も遅いというのに彼の声は弾んでいた。 「いい店?」 『ん、ランチだ。ランチ』 彼の声色は明るいが、私はスマホを耳に当ててため息交じりに小さく笑った。
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