9月24日 坂部邸 書斎

1/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ

9月24日 坂部邸 書斎

窓から入ってくる光が、宙を舞う埃を照らしている。 本に囲まれた書斎の椅子に、一人の男が座っていた。 まだ若さの残るその顔は、しかし、げっそりとやつれている。 「……めい、香奈、お父さんはもう疲れたよ」 言って男は、手元の日記帳を閉じた。 そして、机の引き出しを開けると、そこからひとつの手鏡を取り出した。 「明石さん……なんでこんなことになったのかなぁ……」 力なく男――坂部雪人は笑って、そして鏡をのぞき込む。 鏡には――
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!