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 山に限らず、自然界というのは人間的な性質のおよぶ領域ではない。  自然界に近寄りすぎた人間は、その人間性を次第に欠如させ、最後には人間ではなくなってしまう。  妖怪の中にも、油すましや一本だたらなど、山の近くで仕事に従事していた人間が妖怪化したという説をもつものや、覚(さとり)や河童などのように実は山で暮らしている人間なのだという説をもつものなど、自然界というのは一種の毒物として働く。  その自然界というのが深い山奥であればあるほど、秘境の地であればあるほど、人間を形作る部分は浸食され破壊される。  そういう話がある。
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