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 「私のお母さんの家に伝わるお話なんだけどね。山姥っていうのは、山神様の奥様なんだって。山神様はね、女の子を山の中に誘い込むの。誘い込まれた女の子はね、山神様との間に子どもを産むんだ。そのあとは、山から帰ってくることもあれば、そのまま帰ってこないで山で生活することもあるんだって。そしてね。そうやって山神様との子どもを産んだ女の子はね。みんな壊れちゃうの。普通の人とね。全然姿も形も変わらないのにね。直前まで好きな男の子とか好きなスポーツとか好きなマンガとかあったはずなのにね。全部忘れちゃって、山神様のことしか考えられなくなっちゃうの。そうやってね、山を守っていくんだって」  言って、ミホリは息をついた。  周りの気温が少し、下がったように感じる。  「えへへ。みんな結構本格的に調べてたみたいだけど、こんなんでよかったかな?」  そういて笑顔になるミホリに、  「い、い、い、いきなりホラーとかぶっこんでくるんじゃねえよ!」  と、リョウは涙目になり、 シゲルは意外そうにミホリを見た。  「すごく良かったと思うよ、ミホリちゃん」  「そう言ってもらえてよかった! じゃあ、今日はもう帰ろうか!」  安心したように胸元で両手を合わせて笑顔を見せるミホリの一言で、子どもたちの怪談考察は幕を閉じた。  「えへへ、リョウ君。怖いなら、手をつないであげる!」  「こ、こここ怖くねーよ平気だよ」  (そう言いながら手はしっかりミホリちゃんとつないでるや)  そして三人は仲良く帰って行った。
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