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 「なぁ、ミホリ」  「―――、え?」  隣の席からかけられた声に、ミホリは一瞬、反応が遅れた。  隣に目を向けると、わんぱくそうな三白眼の少年がニヤニヤと笑いながらこちらを見ていた。  「山姥っていると思うか?」  「―――へ?」  次いで、隣の席の少年、リョウから発せられた言葉に、意表をつかれた訳でもないのに頭が白くなった。  ミホリは周囲を見渡す。  縦に六列並んだ机の前には教卓があり、その向こうには『自習』と大きく書かれた黒板がある。そして、ミホリも含めた周囲の子どもたちは急用で早引けした担任の諸井に代わってやって来た隣のクラスの口山の指示通り、算数のドリルを解いていた。  ミホリは隣に視線を戻す。  リョウが開いているのは、どう見ても国語の教科書だ。  「………リョウ君」  言って、嫌われないかと少し悩み、それでも言わないといけないと思い直し、意を決する。  「今、算数の時間だよ?」
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