落ち

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「じゃあ……」 そう言って、僕は再び死の淵へ振り返る。 ただ…さっきまでとは少し心情が変わっていた。 なんだろう、この違和感は。 「もし戻って来たら、天国からのお土産よろしくね」 「片道切符だから戻って来れないかな」 「あら、上手いこと言うわね。辞世の句には丁度いいじゃない」 句なのかこれ? 「…………」 僕は決心を着けようとする。 片足を半歩だけ奈落へと近づける。 近づける……だが。 「…………………」 近づけない。 これ以上、踏み込めないのだ。
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