ep1.プロローグ

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 僕は、小さな望遠鏡を作っている。職人とは少し違う、これは趣味みたいなもの。普段は街外れにある、何かの操縦席のような椅子にボタンやダイヤル、目盛りがいくつもついた、大きな天体望遠鏡がある館に、1人で住んでいる。  もう18だし結婚話も何度かもらったが、人には興味がない。僕は、空が好きだ。だからこの館を前の館長から引き継ぎ、任されている。大きな天体望遠鏡は、毎日欠かさず手入れをしている。  ここは、天文学中心の書籍や資料を豊富に集めた「街の図書館」……と言えば響きは良いが、館には流星群の時期と、夏休みくらいしか街の人は寄り付かない。お客さんの大半は子供達だ。  大都会にある人気の「プラネタリアム」なんてものは、勿論ない。到底この館に置けも買えるわけもない。それに、そんなもの無くてもここなら街の灯りも邪魔にならなくて、程好く空も星座盤通りに見えるくらいは、空があいている。  プラネタリアムなんてものは、この景色が都会で見られないから、人工的に天井に投影するだけの装置だ。それなのに、この街の大人達は皆着飾って片道2時間の列車旅をし、わざわざ都会まで出向くのだから、僕には理解できない。
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