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突然、けたたましい音が響いて、皆が一斉に火災報知器を見上げた。
僕も厨房から店内を覗いた。
天井に向かってのろしのように立つ煙の出どころを辿ると、さっきまでいた薪ストーブから出た炎が、めらめらと周囲の棚やストーブ自体を舐めていた。
と思うと、ストーブが爆発音を上げて大破し、一気に炎が燃え盛った。
客が悲鳴をあげる。
「皆さん、すぐに逃げてください!」
親父が叫んだ。
客たちが落とした盆やトングが大きな音を立てて、パニックを煽る。
まさに命からがら、大の大人たちが広い店内を走り回り、出入り口に殺到した。
厨房にいた従業員も、中庭に通じる扉へ駆け込んだり、水道に繋いだ絡まったホースを伸ばそうとしたりと右往左往し、地鳴りがした。僕は隅に追いやられた。
イートインのほうにいた賢人たち4人も遅れて店の出口へ駆けつけたが、親父がストーブにかけたバケツの水を既に大きくなった炎が飲み込み、ごーごーと激しく猛ったかと思うと、出入り口を塞いだ。
「こっちだ!」
賢人がトリオをイートインの方へ呼んだ。3人が駆け込み、炎と煙を遮るように賢人が中から扉を閉めた。
まずい。イートインの部屋には出口が中庭へと繋がっている地下貯蔵庫があるということは、僕が昔賢人に教えたことだ。
でも今は、その地下貯蔵庫の扉には鍵がかかっている。
「羅夢!早く逃げなさい!」
親父が激しく咳き込みながら、僕に言った。「お父さんは大丈夫だ!」
従業員がやっとほどいた長いホースを親父がひったくり、「早く水を出せ!これなら間に合うぞ!」と叫んだ。
僕は親父のことも心配だったが、今は賢人だ。壁にかかった鍵をもぎ取るように掴み、中庭へと飛び出した。
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