「黒い天使」『災厄者』6話

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16    暗闇を、無数の閃光が飛び交い闇を切り裂いていく。  凄まじいフルオートの銃声と悲鳴が木霊した。  だが、その恐怖の時間もごく僅かな間であった。 「!!」  フルオートの雨の中、ユージは自分のコートを通路に投げ込んだ。  弾幕は、室内ではなく突然現れたシルエットに集中する。  が…… 弾はコートを切り裂く事はなく、吸い込まれるようにコートの中に消えていった。ユージのコートは防弾処理が施されている。SMG、小銃弾くらいならば貫通しない。コートは銃弾によって踊るように舞う。とはいえ、そう長くは持たない。だが一瞬の隙でよかった。射撃がコートに集中した僅かに隙に、ユージは飛び出すと一瞬のうちに通路に光るマズルアラッシュ……敵の場所に向かって銃口を向けた。  勝負は一瞬だ。居場所さえ分かれば、待ち伏せもユージにとって脅威ではない。  マズルフラッシュは4箇所…… 2秒で、3箇所に50AE弾を叩き込む。弾が切れた。マガジンを交換せず、ユージはすぐに腰のDE44を抜き最後の一人に向かって銃弾を叩き込んだ。  ユージのコートが、床に落ちた。 「…………」  DE44のマガジンを交換した。  そっと通路を覗くユージ。そこには死体が4つ、転がっている。  ……コール支局長が怒るな、これは……  結局ウェラーの私兵を全員殺してしまった。彼らから証言を得ることはこれで出来なくなった。もっともこの状況下でこの結果は致し方ないところだ。  ユージは通路に入る。淡いLED電灯の明かりで照らされたコンテナ造りの地下通路で、天井は思っていたより高くケーブルやエアダクトが張っていた。この地下通路は40mほど続いているだろうか。丁度本館と別館地下の距離を考えれば凡そ計算が合う。 「人のレザーコートをボロ雑巾にしやがって……」  近くで倒れている死体から順に懐を探っていく。だが、誰も爆破スイッチやコントロール・パネルの類は持っていなかった。 「…………」  この4人が本館を爆破したのではないとしたら、ラテンスキーか? だがラテンスキーの姿はここにはない。  ユージはDEを構えながら歩を進める。早歩きで、奥までたどり着く。ナニかまだ人の気配を感じるが、見当たらない。 「いないねぇ…… 何か殺気は感じるんだけどねぇー」 「!?」
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