0人が本棚に入れています
本棚に追加
16
暗闇を、無数の閃光が飛び交い闇を切り裂いていく。
凄まじいフルオートの銃声と悲鳴が木霊した。
だが、その恐怖の時間もごく僅かな間であった。
「!!」
フルオートの雨の中、ユージは自分のコートを通路に投げ込んだ。
弾幕は、室内ではなく突然現れたシルエットに集中する。
が…… 弾はコートを切り裂く事はなく、吸い込まれるようにコートの中に消えていった。ユージのコートは防弾処理が施されている。SMG、小銃弾くらいならば貫通しない。コートは銃弾によって踊るように舞う。とはいえ、そう長くは持たない。だが一瞬の隙でよかった。射撃がコートに集中した僅かに隙に、ユージは飛び出すと一瞬のうちに通路に光るマズルアラッシュ……敵の場所に向かって銃口を向けた。
勝負は一瞬だ。居場所さえ分かれば、待ち伏せもユージにとって脅威ではない。
マズルフラッシュは4箇所…… 2秒で、3箇所に50AE弾を叩き込む。弾が切れた。マガジンを交換せず、ユージはすぐに腰のDE44を抜き最後の一人に向かって銃弾を叩き込んだ。
ユージのコートが、床に落ちた。
「…………」
DE44のマガジンを交換した。
そっと通路を覗くユージ。そこには死体が4つ、転がっている。
……コール支局長が怒るな、これは……
結局ウェラーの私兵を全員殺してしまった。彼らから証言を得ることはこれで出来なくなった。もっともこの状況下でこの結果は致し方ないところだ。
ユージは通路に入る。淡いLED電灯の明かりで照らされたコンテナ造りの地下通路で、天井は思っていたより高くケーブルやエアダクトが張っていた。この地下通路は40mほど続いているだろうか。丁度本館と別館地下の距離を考えれば凡そ計算が合う。
「人のレザーコートをボロ雑巾にしやがって……」
近くで倒れている死体から順に懐を探っていく。だが、誰も爆破スイッチやコントロール・パネルの類は持っていなかった。
「…………」
この4人が本館を爆破したのではないとしたら、ラテンスキーか? だがラテンスキーの姿はここにはない。
ユージはDEを構えながら歩を進める。早歩きで、奥までたどり着く。ナニかまだ人の気配を感じるが、見当たらない。
「いないねぇ…… 何か殺気は感じるんだけどねぇー」
「!?」
最初のコメントを投稿しよう!