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背後から突然の声に、思わず振り向くと同時にDEの銃口を向ける。そこにはサクラが驚くほど近くに立っていて、思わずそろ~っと両手を挙げた。
「何でお前がここにいる」
「DEを落としていたゾ」そういうとサクラはユージが先ほど床に捨てたDE50を差し出す。
「50口径は弾切れだ」そう答え、ユージはDE50を受け取りヒップホルスターに入れた。DE44と入れ替えた形だ。
「で? 何でこっちに来る。お前はあっちの警備役だろ」
「もう掃討したみたいだしいいジャン。それに…… あっち、もうなんか辛気臭くて嫌なんだよね…… 陰気臭いジメジメ空気っていうかベトベトした空気がどうにも……」
やれやれ……と溜息をつくサクラ。ユージも後ろの秘密地下室を一瞥した。サクラの気持ちも分からないではないが、それも任務だ。……とはいえサクラはFBI捜査官ではないからそんな責任はないが……
ユージは周囲を確認する。火の手が迫っている様子はない。私兵たちはもういない。が……気になることがある。ラテンスキーの姿がない。普通に考えれば逃げたと考えるのが普通だ。あの男の身になれば、こんな事件に関わるより、ユージたちがここに張り付いている間に少しでも遠くに逃げるのが得策のはずだ。普通に考えたら、だ。だがラテンスキーは狡猾だが賢い男ではない。
ユージが思案中…… サクラはじっと天井を這うエアダクトを見ていたが、一箇所で目が留まった。耳に集中する。音が聞こえた。
サクラはユージの袖を引いた。
「ユージ! エアダクトに誰かいる」
「何!?」
ユージが振り向いたのと同時だった。エアダクトが外れ、巨体が地面に降りたかと思うと、天井に隠れたシャッターが一気に下に降りる。
……しまった……!! と思ったときには、シャッターが完全に下に降りてしまった時だった。その大男には見覚えがあった。
「ラテンスキー!!」
ユージは叫ぶと、シャッター越しに舞い降りたラテンスキーに銃口を向け引き金を引いた。弾はシャッターを貫通したが、弾道は曲がり、弾は壁で跳ねた。すぐに駆け出しシャッターを叩くが、音だけが無慈悲に響いた。
「くそっ!」
完全にユージは出し抜かれた。エアダクトは小さくて、女子供ならともかく190cmを越える大男が音を立てる事なく通れるとは思ってもいなかった。しかしそれは間違いであったことをすぐにユージは思い出した。
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