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ラテンスキーも<狂犬>同様、元SASリース=ケイチェックの訓練を受けている。<狂犬>も、細く狭いエアダクトを無音で這い進む能力に長けていた。ラテンスキーにもそのスキルがあったのだ。その事をユージは不覚にも失念していた。
「ありゃりゃ…… しまった」
罰が悪そうにサクラは呟いた。しかし呟いたところですでにもう遅い。
それよりも最悪なことは、このウェラー邸のセキュリティー操作機を持っているという事だ。ユージとサクラは秘密部屋から引き離された。もし秘密部屋に何か仕掛けられていたら今のユージたちには手も足も出ない。
さらに悪い情報をサクラが見つけていた。エアダクトの上に、微弱な電波を発している30センチ四方の箱を見つけた。その事をユージは聞くとユージの顔に初めて焦りの色が浮かんだ。
「爆弾だ」
「こんな通路に普通仕掛ける?」
「本館のモノを外してここに取り付けたんだろう。あの大男、小知恵が回るじゃないか」
「取り外ずそーか?」サクラなら飛んでいけば、複雑に入り組んだダクトやコードを掻い潜り取り外す事ができそうだ。だがユージは「ちょっと待て」と引きとめる。電波が出ているということはすでに起動しているということだ。下手に動かせば爆発するかもしれない。
ユージには爆発物に対して膨大な知識があり、かつ直感的に危険を感じる高い危機回避能力がある。直感は今すぐ爆発しない、と告げている。
「考えがある」
そういうと口早にユージは思いついた作戦をサクラに説明する。いつ爆発してもおかしくはない。急ぐ作戦だ。
……何が一体どうなっているんだ……!?
ウェラーは何が何だかさっぱり分からない。
突然現れたラテンスキーは半裸だった。ゴキッゴキッと両肩の関節を填めた。
危害を加えるではなく、不敵な笑みを浮かべ周りを見渡している。
……この男はロシアン・マフィアではなかったか……? 敵ではないのか!?
だが危害を加えそうな気配はない。ズボンにはハンドガンが突っ込まれているが抜く様子はない。
「随分手酷くやられたな、<ヴォースィミ>」
「……<アジンナッツァッチ>」
<狂犬>だけが、眼を鋭く光らせた。ラテンスキーがFBIの囮だった事は知っている。そしてそれを裏切った事も。
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