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それから、頻繁にこのオジサンに呼ばれるようになった。いつも知っている歌や色んなお話……御伽噺を喋った。オジサンは、黙ってそれを聞いて、そして終わるとキャンディーを呉れるようになった。「痩せすぎはよくない。喰え」と、いつもそう言ってキャンディーを呉れた……
オジサンには<名前>がなかった。私と一緒だ。周りからは<ヴォースィミ>と呼ばれていたオジサン。だけどそれは番号だから、きっと嬉しくないと思った。だから私は、岩のように大きなオジサンだから、<ロックおじさん>と呼んだ。
何十回目だろうか…… ひどく<ロックおじさん>は機嫌が悪い日があった。私は自分の体で慰める<仕事>だと思った。するとオジサンは本気で怒った。オジサンは言った…… 私は<マリア>様なのだと…… それからオジサンは、私を<マリア>と呼ぶようになった……
「いい加減くたばれ!!」
ショットガンの銃底が容赦なく<狂犬>の顔面を強打する。鮮血が舞うが<狂犬>は身じろぎもせず、マリアに向かって微笑み続けている。
「ロックおじさんっ!! おじさんっ!!」
「ウェラー!! この小娘をさっさと始末しろっ!! 撃て!」
ラテンスキーはそう叫ぶと、ショットガンを棍棒のように握り直した。そして大きく振りかぶった、その時だった。
「!?」
高速の44マグナム弾が、ラテンスキーのこみかめを撃ち抜いた。そして続けて3発のマグナム弾全弾がラテンスキーの顔に撃ち込まれ、ラテンスキーの頭部を粉々に破壊した。頭を失ったラテンスキーの屍は、力を失いその場にバタリと倒れる。
「ギャーッッ!!」突然の事に悲鳴を上げるウェラー。
その時、猛然と煙が吹き込んだかと思うと、その煙のカーテンの奥からユージが姿を現した。
「ウェラー!! 俺を怒らせるとこうなる! よく見たか!!」
「ひいぃぃっ!!」
猛然と現れたユージを見て、ウェラーは持っていた拳銃を投げ捨てその場にへたり込んだ。
ユージは全身の服がかなりズタズタになっていたが大きな怪我は負っていなかった。そして煙の中から五体満足のサクラが出てきたがこちらはウェラーには見えていない。サクラは愛用のデニムジャケットを着ていなかった。
「ば……爆発はどうした!? 化物が!!」
「知らんのか? 俺は不死身でな」
ユージはそういうとDEをホルスターに戻した。
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