プロローグ

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「この腕輪があると、この街から出られない。 伝承によると、枷(かせ)のような代物だ……一年の歳月を掛けて観察していたが、腕輪を託すに値する相応しい人間は……ハル。お前だ。 受け取って、くれるよな?」俯きながら言う。 「俺なんかで……いいのか?」俺は不安になる。 ケンが旧皆星村の伝承を受け継いでいるのだろう。俺のような余所者(よそもの)に務まるのか?僅かばかりの不安が俺の頭を掠める。 「受け渡しの『儀式』させ行えば、直ぐだ」 「儀式……って、外せないのか?その腕輪……」 儀式……古来の風習に乗っとり神聖な所作を経る、古代から脈絡と続く重みを含んだ言葉だ。 「満月の月の夜、皆星の街を見下ろせる小高い丘の上で、受け取る者が『願い』を口にしながら、渡す者が受け渡す者の心臓に触れればいい」 ほとんどの条件を満たしており、後は俺である受け取る者が願いを口にするだけ、だった。 選んだかのように、整われた準備の周到さだ。
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