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「ハル、疑問に思うなら触ってみるといい」
ケンの両手首に付けられた腕輪を触ってみた。
僅かばかりの凹凸はあるモノの、とても指で剥がれる腕輪でもなく、たまたま財布にあったポイントカードを滑り込ませる事も出来ない。
腕輪には【Sudden(シュドゥン)】と刻まれ、俺にはなんの意味を為す英語なのか解らない。
……僕の頭は、学年で中の下ほどではあるが……
「どうだ?解ったか?これはそう言う代物だ」
「……そうなのか」人間の力では無理と断定した。
「ハルの心の準備さえ整えば、儀式を行う……」
俺は悩んだ末に、一年ケンに世話になった恩を返すつもりで、儀式を受ける事にしたのだ……
「女の子になりたい……女の子になりたい……」
ケンの掌(てのひら)が僕の心臓に触れる。
俺が目を瞑(つむ)ると、様々な想いが蘇る。
ある種の走馬灯のような気もした。
走馬灯なんて俺は見たこと無いが。
僕の両手首に腕輪が渡ると、逃げるようにしてケンがぼーっとする俺から去ったのだった……
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