学園刑事物語 電光石火 前編  

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 ジジを殺してしまって、ゴメン。俺は、銃にも慣れている筈だった。でも、俺を庇って撃たれたのは、ジジであった。犬の耳は、俺よりも危険が聞こえていたのかもしれない。  でも、俺がもっと強ければ、ジジを死なせずに済んだ。  お互いに謝っていると、そのまま眠ってしまった。  目が覚めると、ベッドに寝ていたが、隣に藤原もいた。互いに昨夜の服のまま眠ってしまったようだ。  誰が運んでくれたのか分からないが、藤原のベッドには寝かさないで欲しい。今日も枕にされていた。  ジジの姿を探して庭に出ると、木の棺に花を添えられて庭に置いてあった。犬用の棺というものもあったのか。ジジは眠るように死んでいた。 「ジジ、助けてくれてありがとう」  でも、ジジをよく見ると、一発目は腹部から肩に銃弾が抜けている。しかし、二発目は、ジジの額から弾は入り、そのまま抜けていない。  二発目が致命傷であっただろう。  額から?それならば、上から撃っている。俺は、自分のいた位置を確認してみた。ジジは俺に覆いかぶさっていた。俺は、一発目でジジが海側から撃たれたと、丘の下を見ていた。ジジが向いていた方向は、俺と反対で屋敷側であった。  ジジに当たった二発目は、屋敷側の上からだった。 「俺は、バカだ」  どうして、一発目を撃った犯人だけ捕まえてしまったのか。  位置だけで推測すると、一発目の殺し屋(鉄砲玉)が、仮に成功したとすると、口封じに殺されていたのではないのか。向かい側の上から狙撃を構えていたとすると、そういう構図になる。  では、何故、ジジを殺したのか。それは、屋敷の上にいたのは、ジジの知っている人物だったのかもしれない。もしくは、ジジが二階に上がり、犯人に噛みつく可能性もある。ジジは犯人を見て、俺を庇っていたのだ。 「確かに、ジジは凄い」  藤原家の二階はいくつかあるが、ジジを狙えた部屋は一つしかない。 「藤原、二階に行きたいのだけど……」 「おはよう印貢。二階ね……今、行く」  二階は藤原の姉と母親が使用していて、男子禁制と言われてしまった。 「でも、由幸は男子じゃないし。弘武君は可愛いから許す」  どうにか二階に上がると、庭の見える部屋を探した。 「ここだ」  和室の十五畳。庭に面して、小さなベランダと大きな窓がついていた。藤原の母親が、客室として利用していた。 「昨日は、誰かこの部屋を使用していたのですか?」
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