学園刑事物語 電光石火 前編  

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 モモンガというのは、リスみたいな動物であろうか。俺は、リスもモモンガを見た事がない。  この中学の玄関は、施錠が二回あった。まだ。外の扉に施錠がかかっている。余程、治安が悪いのであろう。  でも、取り敢えず施錠してある程度であるので、外すのは容易であった。防犯センサーは、足元にあるので、飛び越えていこう。 「だから、もう殴らないから……」 「本当?」  油断させて、殴るのではないのか。ドアの隙間に藤原が手を掛けていた。俺は防犯センサーを跨ぎ、外へと逃げる。 「ほら、飴玉やるから、少し待って」 「飴玉を持ち歩くのは、どこかのおばちゃんだろう……」  冗談かと思っていたら、藤原はポケットから飴玉をだしてきた。しかも、巨大な飴であった。 「特注品。あげる」 「要らない……」  飴玉はいらないが、本当に飴玉なのか気になってしまった。卓球の玉なのではないのか。じっと飴玉を見てしまって、逃げるのが遅れてしまった。 「ほら……動かないでいてね」  藤原は俺だけを見て歩いてきていたのか、防犯センサーに引っ掛かった。すると、どこかで、ブザーが鳴りだした。  しまった、興味に負けて、危うく捕まるところであった。 「…………センサーの位置は確認してね。じゃ、ありがとう?いや、何だ?さよなら」  殴らないでくれてありがとうというのも、おかしい。俺は先生が来る前に、学校を飛びだした。  この四区の中学は、玄関にあった靴箱からすると、結構大きい。離れて校舎を見ると、元々英文字のH型の校舎に、建て増しが繰り返されているので複雑なのだと分かった。  四区は治安が悪いので、塀なども設備も凄い。高く張り巡らされ、刑務所のように見える。塀に監視カメラもついていた。俺は山のネットを飛んできたので、監視カメラを偶然抜けてしまった。  少し観察して分かったが、ここは外部からの侵入を監視しているのではなく、内部からの脱走を防いでいた。丁度、ジャージの色からすると三年が逃げて来たが、門を抜けることなく先生に捕まっていた。  各地に、防犯カメラやセンサーが設置されているらしい。  俺は無意識に、センサーの類を全てクリアして出てしまった。
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