学園刑事物語 電光石火 前編  

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 生活するだけならば、既に一人で何でもできる。後は、金をどう稼ぐかだけであった。 「そうか……残念だね」  兄もあっさりとしていた。 「叔父さん。俺、養子に行きますから、もういいです」  奥で女性と楽しそうに話していた叔父は、やや顔をしかめた。 「……もう話がついたの?じゃ、俺と島に行くか?」  兄と俺が二十二歳離れているように、叔父にも社会人となっている子供が二人いた。既に、叔父には孫もいる。 「いいえ。養子になります。あてがあるので、手続きの用意ができたら電話します。それまで、俺は知り合いの家にいます」  もう誰かと関わるのは嫌だ。 「弘武。頑張るのはいいけど、君は最近まで小学生だったよね?」 「誰でも小学生時代があるでしょう?」   最近までというのが問題なのだとは思う。早く帰りたいが、足が痺れて立てない。女性がジュースを持ってきてくれた。 「先ほど、一人で暮らすと言ったけど、養子なの?施設でもないの?」 「今欲しいのは保護者という名義だけなので、契約します。何もしなくても金になるのならば、保護者となってくれる人もいます。施設は少し入っていた事がありますが、窮屈でしたので嫌です」  俺は、他人の子供を育てるというのが、信じられない。施設では、事務的に処理はされたが、それだけであった。それは俺には問題がなかったが、消灯が八時であったのが耐えられなかった。八時で眠れないが、話す事も電気を付けることも許されず、じっと朝か眠れるのを待つのが辛い。 「ではさ、そこの倉庫の三階を貸すから、大家として君を預かろうか?家賃は貰うよ」  俺は痺れる足をさすりながら、玄関から外に出て、倉庫の三階を見た。階段があったので登ってみると、従業員の休憩室になっていた。ボロボロであるが、住めなくはない。  俺は戻ると、再び和室に正座した。 「夜だけ時々借ります。一泊幾らでお願いします」 「一泊、シャワー付で千円かな」  月三万円というところになる。 「ではお願いします。昼間は休憩室として使用してください。俺は、九時以降で構いません」 「……九時まで、どこにいるの?」  どこかで働き口を探す。 「働きます。港には仕事があると聞きましたので、行ってみます」
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