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つい言葉に反応して、殴り飛ばしてしまった。
「転校生が、藤原を殴ったぞ!」
ドヤドヤと教室が騒いでいるのかと思ったら、校舎全体が騒いでいた。俺は、まずい人物を殴ったのではないのか。校舎から幾人もが飛びだして来ていた。
「この野郎!」
野郎というのは合っている。先ほどのきれいとか、可愛いは間違っている。でも、合っているからといって、素直に殴られるわけにもいかない。
避けたついでに蹴り飛ばし、更に回し蹴りをしてしまった。余り治安のよくない場所なのだとは、よく分かった。
「喧嘩慣れしているって言っても、よそ者だろう」
俺は、ため息を付いてしまった。相手はナイフを出してきた。
「ナイフか……」
直ぐに得物を出すというのが、小者であった。俺は、自分を刺そうとしているナイフを手で受け止めると、そのまま投げ飛ばしてみた。ついでに、相手の手からナイフを弾くと、それを蹴って飛ばす。
「皆、手を出すな。殴られたのは、俺だろう」
随分と殴ってしまったようで、藤原の口の端が切れていた。
今更謝っても遅いが、藤原に対しては俺が悪かったと思う。
「ナイフでも微塵も怯まないってことは、喧嘩慣れじゃないよ。死なない程度を知っているってことだ」
藤原はボクシングの構えを取っていた。その姿勢からすると、長く習っている。仲間の感じからすると、藤原はこの学年のシンボル的なものかもしれない。喧嘩ならば俺が勝つのかもしれないが、組織の勝ち負けでは俺の負けであろう。
「ごめん。藤原。可愛いという言葉で、つい殴った」
取り敢えず謝ってはみた。
第二章 星の王子 二
藤原は同じクラスであった。転校生で知らなかったということで、今回の殴りは許すと、蹴られた伊東が決めた。
殴りは許すということは、蹴りは許さないのかと、つい聞きそうになって止めた。俺は、日本語の解釈をよく間違う。
最初が悪かったのか、俺は、このクラスに馴染めそうにもない。藤原は一年をまとめていたので、誰も俺に近寄って来なかった。しかも、机が無いので、床に座って授業を受けてしまった。
とにかく、はやく逃げよう。
次は音楽となっていたが、俺は音楽室を知らない。この感じでは、誰に聞いても教えて貰えないだろう。
全員がいなくなるのを待ち、帰ることにした。
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