君がくれた世界

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 もうすぐ、太陽が昇ってくる――。  少し冷たさの和らいだ海風が、優しく頬を掠めて行く。彼に後ろから優しく抱かれたまま、ベランダの手摺に両腕をついて目の前の景色を眺めた。海に浮かぶ遠い島影から鮮やかなオレンジ色の太陽が頭をもたげてくる。  刺すような明るい光が四方に広がって、小さな瀬戸内の海と島々を明るく照らしていく。  ああ、なんて暖かで、色鮮やかな世界。  こんな素晴らしいところに俺は迎え入れられた。  この世界をお前にやると、彼は優しく言ってくれた。  俺もいつかは自分の色に染め上げた世界を彼にあげられるのだろうか。  そんな時が早く来ればいいな。その場所がどんなに小さくても。  これが俺の世界だ、って胸を張って言えるように。  優しい色のある世界に。  そして、誰でも迎え入れて暖かく笑える場所をこれから俺は創造したい。  きっと彼の傍にいれば、それは可能だ。  自分一人で出来なければ彼と二人で造ればいい。  そう素直に思える程に――。  君がくれた世界は、今日も光で満ち溢れていく。
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