君がくれた世界

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 抱き上げられて薄暗い廊下を進むと、カチャンとドアの開く音が聞こえた。そのままさらに暗い部屋へと村瀬さんは入っていく。  部屋の中へと入り込んだ村瀬さんがゆっくりと上体を倒すと、柔らかく沈むベッドの上へと優しく下ろされた。  何だか体が震える。止めたいんだけれど止まらない。  さっきから胸がドキドキして、音が村瀬さんに聞こえちゃいそう。こんなの聞かれたら恥ずかしくて死んでしまう。  だって、この音はこれから彼と一つになることへの期待が飛び跳ねている音なんだから。  暗い室内に少し安堵して、離れていく村瀬さんの温もりに少し不安になる。暗さに目を慣らそうとしていたら、バタン、とドアの閉まる音と一緒に急に室内が明るくなった。  あ、眩しい――。  思う間も無くギシッとベッドが軋む音がして、村瀬さんの顔が眩しい視界の中に近寄ってきた。横たわったまま抱きしめられると、俺の唇を村瀬さんは一舐めした。 「カズト、舌を出して」  言われるがままに薄く開いた唇の間から少しだけ舌の先端を覗かせる。  すると村瀬さんはまたそれを一舐めしたあと、きつく吸いついて、自分の舌を俺の口の中へと突っ込んでくる。んんっと唇を開いてしまうと、奥へと入り込んだ村瀬さんの舌は俺の舌を絡め取って、さらに吸い上げられた。 「ふぅっ、……んん、は、……ん、ふ……」  だんだん耳に入ってくる舌を絡め合う音が体の熱を上げていく。その音の先を行くように村瀬さんのキスは激しさを増していく。  このままキャンディのように舐められて溶けて無くなってしまうんじゃ……。 「んあっ……んん、ふう……」  村瀬さんが顔の向きを変えるほんの僅かな間に小さく空気を取り込んだ。口の中では自分と村瀬さんの唾液が混ざりあって甘い媚薬に変化していく。その媚薬は確実に俺の股間を熱く昂らせた。  くちゅっ、ちゅっ――。  高い水音を残して村瀬さんの唇が離れていく。粘つく唾液が細い糸を引いて、途切れたそれは冷たく俺の下唇に落ちた。  眩しい光を背景に影になった村瀬さんが俺を見下ろして、ふふ、と笑う。下唇をゆっくりと親指でなぞられて滑った唾液を拭き取られると、 「赤い顔をしてから。可愛いな、カズト」
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