君がくれた世界

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 間近で見る爽やかな笑顔の中にも、どこか俺の知らない大人の雰囲気が漏れ出していて、目のやり場に困ってしまった。  村瀬さんがまた顔を近づけて、今度は左の頬に軽くキスをされた。そしてそのまま、唇は耳へと移って彼の吐息が大きく耳の中へと入り込んで鼓膜を揺らした。  耳たぶを甘く噛まれて、舌を這わされて、くすぐったくて首を竦めた。それでも執拗に湿った音が間近で響くと、また、左の耳からゾクリと背中を伝う痺れが起こった。 「ふわっ、……あっ」  村瀬さんの唇が耳から首筋へと下りて喉を甘噛みされた。思わず顎を反らした俺の目に村瀬さんの肩越しの天井から部屋を明るく照らす蛍光灯の光が強く入ってきた。  スウェットの上着をたくしあげられて脇腹を這い始めた村瀬さんの右手の吸いつく感触に震えながらも、 「む、……らせ、さん。……灯り、消して……」  吐息混じりの自分の声に驚きながらも何とか要望を伝える。 「うん? なぜ?」 「なぜ、って……、あっ、ヤダ……、はずか、しいから。……んっ、おねがい……」  なぜ、と聞きつつも肌に手を這わせる村瀬さんを潤んだ瞳で見つめる。他人に撫でられることを知らない肌の表面が薄く粟立つのが分かる。  でも、すごく気持ちいい……。  村瀬さんが、上体を上げて俺を見下ろす。 「恥ずかしいか。でも、そのお願いは聞いてやれんな、カズト」  たくしあげられたスウェットの下から露になった胸を、すうっと指先で撫でられた。 「んあっ、ふぁぁ」 「ほら、今のお前の顔。俺が初めて見る表情じゃ。お前が今まで俺の顔で他人の表情を学んだように、俺も今まで知らんかったお前の顔をはっきり見たいからな」  ひくんっ。村瀬さんの指先が右の胸の小さな突起を捉えた。先端を軽くくすぐられて廻りを撫でられると、自分でも乳首が固くなったのが分かった。 「……あぁ」  固くなった右の乳首をゆっくりと押し潰されたあと、かり、と爪で擦られて、 「じゃけえ、お前自身も知らないお前の表情を俺に隠さず見せてくれ……」
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