君がくれた世界

102/110
前へ
/110ページ
次へ
 村瀬さんが上着を俺の頭から引き抜く。きつく閉じていた瞼を開けると、さっきよりは室内の灯りが暗く落とされていた。だけど薄いオレンジ色の間接照明は、その中の引き締まった彼の体の輪郭をさらに際立たせて、肌を鈍く光らせていた。  薄灯りの下の彼の顔を見上げる。ああ、さっきと同じ表情。だけど少し違う。何だろう?  俺を見下ろすその瞳は優しさの中に真剣さがあって、そして火傷しそうな熱もある。ギラギラとした耀きと全てを包んでくれるような温もりと。  彼からいつもより少し早い掠れた呼吸音がする。でも、きっとこれは俺も同じ。村瀬さんと同じ瞳で表情で熱い呼吸で彼を見上げている。  それは俺が興奮しているから。これ以上は無いくらいに彼が欲しいから。だから、今の彼の顔は俺が欲しくて堪らない顔。愛する人を欲している表情――。  村瀬さんが俺に欲情している……。それだけで本当にうれしい……。  また村瀬さんと深い口づけを交わす。何度も角度を変えながら、少しずつ彼のキスを覚えていく。やがて唇を離されると今度は胸の硬くなった突起へと唇を這わされた。 「……はぁ……ん、ああ」  ねっとりと舐められて口の中に含まれた乳首は、あまりに硬くなり過ぎて小さな疼きまで生まれてくる。でも、それすらも徐々に感じたことの無い快感へと変わっていった。 「ふ、……あぁ、――むらせさん」  上擦った声で彼を呼ぶと、直ぐに軽いキスで応えてくれた。  村瀬さんの手のひらが俺の頬から首筋、胸から腹へと滑り落ちる。その跡は高く熱を発して、じりじりと素肌を痺れさせる。 「カズト。……ほら、少し腰を上げて」  何を言われているのか頭で理解する前に体が反応した。ちょっと両足に力を入れて腰をあげると、彼はするりと俺のスウェットのズボンと下着を一緒に両足から引き抜いてしまった。 「あっ……」  うそ。俺、なにも着てない――。  一気に恥ずかしさで体が震える。何とか見られないように両手で大事なところを隠して小さくなろうとした時、村瀬さんに柔らかく両手を掴まれて、腕を左右に拡げられてしまった。 「……やだ、――見ない、で、」  俺の上に跨ったまま、村瀬さんはじっと俺の裸に視線を落としている。それだけで心臓が壊れてしまいそうになる。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

764人が本棚に入れています
本棚に追加