君がくれた世界

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 頭の中が真っ白に弾けた瞬間、ぐうっと下腹に力が入って思い切り熱い液体を放出した。小さく痙攣しながら粗い息を繰り返す俺を、村瀬さんが優しく抱きしめてくれた。 「……ん、むら、せさん……、汚れちゃう、から……」  頭から籠った熱が冷めていくと、重なった互いの素肌の間にある自分の放出した精液が気になってくる。でも、村瀬さんはそんなことはお構い無しで、しばらく俺を抱きしめて髪を撫でてくれたあと、体を起こしてまだ息の粗い俺の額に軽くキスをしてくれた。  きつく閉じていた瞼を開けると少し滲んだ村瀬さんの笑顔が写った。 「……じゃあ、もう寝るか。明日はカズトの大学の入学式に着ていくスーツを買いに行くからな。早う起きんといけんし」  ――えっ? もう終わりなの? だって、今度ゆっくり一晩かけて教えてやるって……。  爽やかな笑顔をくれているのに、その表情の下に何かを堪えているような感じを受けるのは思い違いじゃ無いよね……。  さらに体を離そうとした村瀬さんに両手を廻して強くしがみつく。驚いたように名前を呼んだ彼に頬擦りをすると、短く伸び始めた髭がチクチクと頬に触った。そのまま顎に唇も寄せてキスをした俺に、どうしたんじゃ、と彼が訊ねてくる。 「ねえ、村瀬さん……、最後まで、して……」 「カズト」 「俺さ、今まで誰とも付き合ったこと無いから童貞なんだよ。きっとこれからもそのままだよ。そのうえ、後ろもまだなんてどうなの? キスのもっと先を教えてやるって言ってくれたじゃん。だったら……、責任持って最後までやってよ……」 「後ろも、って……。お前、何でそんなことを知っとるんじゃ……」 「そんなの、ちょっとネットを覗けば判るよ。もしかして、俺のことがまだ子供だと思っているから、してくれないの?」  そうじゃないけれど、と躊躇する村瀬さんに、 「俺が大人になるまで待つなんて無しだよ。俺、この前、十八になったばかりなんだし」 「えっ? この前?」 「俺ね、早生まれなの。だから俺が二十歳になるのを待つのなら、あと二年はゆうにあるよ」  驚きの中に少しの焦りがあるのを俺は見逃さなかった。だってさっきからお腹に当たっている布越しの彼自身が村瀬さんの気持ちを代弁している。
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