君がくれた世界

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「……少し動くから」  そういうとゆっくりと俺の中で動きはじめた。 「んっ! あぁっ……っ、ぁ、ぁ、……う、」  引いていく存在にさみしさが募って、満ちてくる存在に暖かく包まれる。それを交互に繰り返されて俺の中は村瀬さんでいっぱいになる。村瀬さんだけになる。  だんだん蕾の奥からの痛みが小さくなって、じわじわと眩むような熱が湧き上がってきた。 「ああ……、や、……そこっ、……へん、に、なるっ……」  指でもしつこく触られた場所を、今度は打ちつけるように村瀬さんが刺激する。彼が体の内側を大きく擦るたびに、襞の無くなった蕾の入口の皮膚が彼の幹を沿いながらめくれるのが分かった。 「はぁっ、……だめっ。……んっ。きもち……いぃ」  生まれて初めての感覚が不快なものから快感に変わる。俺の吐息まじりの言葉に村瀬さんが喉を鳴らした。足を抱えられてさらに腰を上げられると大きく奥へと打ちつけられた。  びりびりと快感が生まれるところがはっきりとしてくる。だんだん波のようにそれは大きくなって俺を翻弄し始めた。  これはさっき吐き出した時とは違う。蕾の奥からの新しい快感はあっと言う間に全身を包み込んで、大きな喘ぎを洩らした。 「あっ! んっ、アアッ! ……ッ! ぁぁ、あうッ! いやっ! ……あ」  俺の喘ぎに応えるように村瀬さんの呼吸も早くなって腰の動きも大きくなった。また頭の中が真っ白になる。でも今度はそれを通り越して……。  どんっ、と強く入れられた瞬間、凄まじい光に弾かれた。 「ひっ! ――っ、ああああっ!! 」  大きく背中を反らす。目を見開いて、口もだらしなく開けたままビクビクと体が震えた。  吐き出していない芯は熱く勃ったままなのに、全身が気だるくて指先一つ動かせない。粗い息の中、焦点の合わない視線の先に彼の顔が近づいてくる。  開いた口を激しく吸われて、何とかキスに応えたあと、彼は耳元で「今度は俺の番な」と囁くと、痙攣が収まらない体の中を勢いよく動き始めた。  うあっ、と顎を上げて喘いだ俺の耳に、小さく村瀬さんの声が届けられる。  カズト、カズト、といつもよりも少し上ずった甘い声で名前を呼ばれて見上げた彼の表情は、また初めて目にする顔だった。眉間に皺を寄せて、薄く開いた瞳で熱く俺を見下ろして……。
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