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ガクちゃんはやっと私の反応に満足したのか、顔を崩して笑った。
「下にスイッチがあるだろ? まだ一回も点灯してないんだよ。点灯役、カコに譲ってやるから付けてみて」
「いいの?」
ガクちゃんが頷くのを待って私はツリーの下に伸びる線を手繰ってスイッチを押した。
電飾の明かりが私の横顔を照らした。
「綺麗……」
振り返った先で、ツリーを挟んでガクちゃんと目が合う。
「ありがとう、ガクちゃん……。こんな大きなツリー……私のアパートには置けないもんね」
私はもう一度ツリーに目の焦点を合わせた。
けれど、視界が薄っすらとぼやけるのは涙の膜のせいかもしれない。
お世話になった杉本夫妻のことを思い出したからだった。
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