【クリスマスなんていらない】

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夫妻と一緒に暮らしていたころは、 ささやかではあったがクリスマスパーティーをしてくれた。 和室の隅に小さなツリーが置いてあり、こたつに入って、料理上手の奥さんの手料理をたくさん食べた。 ミートソースのスパゲティがおいしかった。 奥さん独自のレシピでウインナー入り。 夫妻は…… 元気でやっているんだろうか…… 「カコ」 ガクちゃんに呼ばれて我に返る。 「料理、手伝うから始めようぜ」 ガクちゃんが冷蔵庫に食材を詰め込みながら言った。 「うん」 私は返事をしながらガクちゃんのいるキッチンに入った。 アイランドキッチンの流しに立てば、正面にはクリスマスツリーが見える。 「ホントに綺麗だね……」 私が言うと、ガクちゃんが私の思い出を気遣うように、「そうだな」と、優しく言った。
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