1668人が本棚に入れています
本棚に追加
「乾杯」
グラスをぶつけ合う音が聖夜に響く。
小さな音は耳に余韻を残す。
「……金魚がいないから静かだね」
「だな。俺ももうあの音があった方が自然かも」
……あの音……
というのは、金魚を飼っている水槽の酸素ボンベのモーター音だ。
あれ以来、二人で大切に飼っているが、
こっちが見守っているのか、見守られているのかたまに考えてしまうことがある。
あの金魚は二人にとって癒しのようなものだった。
目の前のグラスを見つめると、シャンパンの炭酸が金の鎖のように気泡をつないでいる。
私はそのグラス越しにガクちゃんを見た。
「ねえ、ガクちゃん……
水槽の中にいるみたい……」
最初のコメントを投稿しよう!