【クリスマスなんていらない】

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自分から誰かにプレゼントなど、本当に久しぶりで、   渡す自分が緊張する。 「俺にプレゼント?」 私は頷く。 「俺はいいって言ったのに」 「菜々美にも買ったの。でも……やっぱりガクちゃんにもあげたくって……ごめん、迷惑だった?」 ガクちゃんは弁護士で普段も上質なシーツを着ている。 身に着けるものにもこだわりを持っているのだ。 それなのに……ネクタイ……。 やめればよかったかな……。 小さな後悔で膝の上に引き寄せたプレゼントの包みを、テーブルの上にあげられない。 「迷惑なわけないだろ? めちゃくちゃうれしい。もしかして、もうそこにあるの?」 私の不自然な動作に気づいていたガクちゃんがテーブルの下を視線で示す。 私は安堵しつつもまだ緊張の解けないままプレゼントを取り出した。
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