誤解

2/2
前へ
/2ページ
次へ
信じてくれない。信じてくれない。 誰も私の言う事を信じてくれない。 私が言っていることは至ってシンプルだ。 難しい事は何一つ言ってない。 なのに、なんで分かってくれないんだ。 私の言い方が悪いのか、聞いてる奴がバカなのか、何度同じ事を言えばいいんだ。 なんなんだ本当に。 ああもう。 私は疲れてるんだ…早く帰りたい。 私は仕事の帰りで、たまたま通りかかっただけだ。 酔っぱらってもいないし、聞かれた事もちゃんと理解している。 真夜中にひと気のない路地を歩いていたのは、自宅に帰る近道だからだ。 こんな時間まで働いていたんだから、少しでも早く帰りたいと思う事に、なんの不思議があるんだ。 キョロキョロしながらゆっくり歩いていた訳でもない。 むしろ早足で歩いていた。 早く帰りたいからだ。 さっきから、何度も言っているだろう。 疲れた…。疲れてんだよ…。もうイヤだ。 こいつら、本当になんなんだ。 私の職業も言った。 鞄の中身も見せた。 怪しい所は何にもないだろう。 さっさっと帰らせてくれよ。 無線で話してる奴、なんなんだチラチラこっち見んなよ。 ムカつくなあ。 それと、目の前にいる奴。 お前、何にもしてないじゃないか。 ダメだろ。仕事しろよ。 ぼーっとしてんなら、帰るぞ。 ったく。 無線の奴、それにしても長いな。 なんの確認をしているんだ。 何を疑っているんだ。 すっとさっきから言ってるだろ。 私は帰宅途中なだけだ。 なんで信じてくれないんだ。 疲れた…もうイヤだ。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加