誤解

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信じてくれない。信じてくれない。 誰も私の言う事を信じてくれない。 私が言っていることは至ってシンプルだ。 難しい事は何一つ言ってない。 なのに、なんで分かってくれないんだ。 私の言い方が悪いのか、聞いてる奴がバカなのか、何度同じ事を言えばいいんだ。 なんなんだ本当に。 ああもう。 私は疲れてるんだ…早く帰りたい。 私は仕事の帰りで、たまたま通りかかっただけだ。 酔っぱらってもいないし、聞かれた事もちゃんと理解している。 真夜中にひと気のない路地を歩いていたのは、自宅に帰る近道だからだ。 こんな時間まで働いていたんだから、少しでも早く帰りたいと思う事に、なんの不思議があるんだ。 キョロキョロしながらゆっくり歩いていた訳でもない。 むしろ早足で歩いていた。 早く帰りたいからだ。 さっきから、何度も言っているだろう。 疲れた…。疲れてんだよ…。もうイヤだ。 こいつら、本当になんなんだ。 私の職業も言った。 鞄の中身も見せた。 怪しい所は何にもないだろう。 さっさっと帰らせてくれよ。 無線で話してる奴、なんなんだチラチラこっち見んなよ。 ムカつくなあ。 それと、目の前にいる奴。 お前、何にもしてないじゃないか。 ダメだろ。仕事しろよ。 ぼーっとしてんなら、帰るぞ。 ったく。 無線の奴、それにしても長いな。 なんの確認をしているんだ。 何を疑っているんだ。 すっとさっきから言ってるだろ。 私は帰宅途中なだけだ。 なんで信じてくれないんだ。 疲れた…もうイヤだ。
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