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「凛はボクのだからね!!手出しちゃダメだよ!!」
「手なんて出しませんーっ。王子を愛でるだけでアタシは満足なんですーっ」
そう言いながらも、ほっそりとした手にしっかり腕が絡め取られている。
「これは妹のキャプシーヌ。ボクたち、ニホンオタク仲間なんだ。キャプシーヌは腐ってなくて、ショージョ(少女)マンガ大好きなの。王道学園モノが一番の好物で、王子さまに夢見ちゃってんだよ」
「うわー、実体あるとよい香りするわー!」
襟元に顔を寄せられ、ホテルを出る直前にシャワーを浴びたからシャンプーの香りを撒き散らしているんじゃないかとどきりとする。
「これだけ美少年だと二次元よりよいわー。ガブちゃんがノロケまくるから、どんなコだろうって会うの楽しみにしてたんだー!とりあえず制服姿が見たいわ!ガブちゃんっ、あなたのブレザーを急いで持ってきてちょうだい!」
微妙な日本語を使いこなし、まくし立てる様子はガブリエルにそっくりだ。トーンも発音も恐ろしく自然なのに、イマイチ内容は頭に入ってこない。
「とりあえず、パパとママンに挨拶してからね。制服はちゃんと用意してあるから落ち着いて」
兄としての立場を意識してか、ガブリエルはいつもより真っ当に話を進める。いや、制服用意してあるとかっ!?もう何が普通とかよく分からない。
「日本語上手だね…」
「二人で漫画とアニメとドラマで独自に勉強したから、ちょっと変なとこあっても気にしないでね」
さりげなく僕にもフォローを入れるが、ガブリエルが日本に来た頃よりも上手い。好きなことが与えるパワーは絶大だと感心する。
「あぁぁぁ、コスプレイベントに連れ回してみんなに自慢したいっ!ねぇガブちゃん、凛ちゃん貨してよ!いいでしょう?」
「ダメダメダメーっ。凛はモノじゃなーぁい!」
さっきボクのだって言ったくせに、と思うけれど言わない。去年ガブリエルがクリスマスコスしていちゃつこうと言っていたのを思い出して、やっぱり似た者兄妹だとくすりと笑う。
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