イブの夜を過ぎても甘く : 空港で

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「なにここ、ベッド遠くない?」 焦れたようにガブリエルが言うので、ふふっと笑ってしまった。 「キスばっかりしてて進んでないんだよ、実は。ベッドルームは隣、だしっ…」 言い終わらないうちに、腰と腿を腕でがっちりホールドされて抱え上げられベッドに連行された。 そのまま横向きに抱き合ったまま倒れこむ。なにもしないで、ガブリエルのブルーグレーの優しい瞳や濡れた唇を記憶に焼き付けるように見つめる。ガブリエルも僕を見ていて、長い指を頬に滑らせた。 この一週間ゆっくり眠ることもできず、移動でぐったりと疲れた体が心地よくシーツに沈む。じわじわと染み込んでくるような眠りに誘われ目を閉じたけれど、眠りたくない。髪を梳く指の感覚が優しく伝わり、瞼にそっと唇が押し当てられる。 「眠たい?」 「…んんっ、大丈夫…しよ」 胸がぴたりと重なるほど抱きつき、カブリエルの匂いを吸い込む。今、一緒にいるんだなって思って、嬉しくなる。 下から押し上げられるように背を撫でられ、胸と一緒に気持ちが迫り上がった。体の芯が熱くなって、隅々まで欲が満ちる。今すぐもっと触れて、もっと奥を探って、最も深い方法で近づきたいのだと体がざわざわと騒ぎだす。 タイミングを合わせたわけでもなく互いの服に同時に手をかけ脱がせ合った。途中で額をつけ、軽いキスを交わして、初めての時のようにくすくす笑って体を撫で摩り、確かめる。形や手触りや息遣い、覚えている記憶と新しい感覚が甘く入り混じっていく。 何も纏っていない身体は晒され、火照り、訴える。絶え間なく、隠しもせず、全部欲しい、全部受け止めて欲しいと恥じらいもなく、全部好きだと甘く。 「凛がいないと、息ができないみたいで…死ぬかと思った」 切ない掠れた声で囁かれ、もう一度たまらないって速度で唇を重ねた。 今まではなんだったんだろうと思うくらい温度もトーンも色もなにもかも、世界が変わる。遠い外国に来たのに、自分の場所に帰ってきたのだと強く感じた。 温かく、不安もなく、きっと明日も楽しいってつゆも疑いもせず、くつろげる場所に。
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