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お父さん。
事業を畳んで、親に申し訳ないからと眼鏡を一生かけないなんて言わないで。
鼈甲の眼鏡も……お父さんの眼鏡をこなごなに壊してしまって……魂がこなごなに砕けてしまったようだった。
娘の私は、いつもみたいに眼鏡をつけてあげたかった。それだけだった。
物覚え着く前に母は亡くなった。気付いたら2人ぽっちだった。だから、たとえようもなく辛く悲しい。
どうにか直そうと手を尽くしたのに……直らない。どうしても直したかった私は……福井の鯖江へ行って、眼鏡の職人になる決意をする。
学校にも行き、認定眼鏡士にもなった。まだ誰もなっていない、完璧な眼鏡修復士になる為に。
何より眼鏡が大好きだった、お父さんの為に。
失ったお父さんの心を取り戻す為だったら、不思議と苦労も全然平気だった。
それから、長い時間がたつ。辛い修行の末に、私は誰にもできなかった修繕……父の眼鏡を修復する事ができた。
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