見えなくなった現在

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店の入り口……更地の入り口付近で、私とお父さんはしばらくぼうっとしていた。 さらさらさらと、泳ぐように秋風が髪を揺らす。 そんなさなか、父はぽつりと言う。和やかに、温かな笑顔で。 「優子……お前、本当に立派な職人になったな」 また私は泣く。今度は声を上げて、ぐずぐずになる。 ばかっ、ばかっ。 違う。 あんたのおかげだよ。 眼鏡が好きなあんたのおかげだったんだよ。 修行も辛かったけど……あたしもどうしようもなく、好きになっちゃったんだよ。 最初はあんたの為だけだったけど。 眼鏡の事が。本当に。切実に。 大好きになっちゃったんだよ。 「ありがとう、お父さん」そう言って私は父を抱きしめた。彼は驚いている。 父の眼鏡を見てみる。 あれ?と頭の中に疑問符がついた。 どうしてかはわからなかったけれど。 心なしか鼈甲のフレームが、喜んでいる様に感じられた。 (了)
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