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「とっくにバレてると思ってたけど、よくここまで我慢で来てたな。」
「アリスちゃんが何かとてつもなく怖いオーラ放ってたからね?」
「ちょっと待って。」
大人な会話をしているようだけどさ、これって一体どう言う事?
「りん、あたしがちょっとずつ小出しにしてアピールしてたのに、焦って必死になって隠そうとしてるんだもぉん。ホント可愛くて襲いたくなっちゃうの我慢してたのよぉ!」そう言われ、思い当たる節がありすぎることにようやく気が付いた。
「香水の下りとか……。」
「うん。」
「表情が変わったっていう下りとか……。」
「うん、うん。」
俺は段々と頭を抱えながら「好きな子でも出来たの?って必要以上に聞いてきたあたりから…?」と指の隙間から菊ちゃんを盗み見た。
菊ちゃんは満面な笑みを浮かべながら頷いて「まさか、あんたもこっちの側の人間だとは思わなかったけどねぇん。」と舌を出しておどけている。
「最悪……。」
「なんでだよ。」
有栖川がすかさず話に割って入った。
「いや、だって菊ちゃんに知れたら、知らないうちにほかの人にも知れ渡っちゃうんだぞ。お前それでもいいのかよ。」
「お前もうすぐ卒業だろ?そうすれば問題ない。それまでこいつには黙って手貰うことにして……。」有栖川は菊ちゃんの鼻をつまんだ。
「いひゃいわね!何すんのよ!」
「聞いてただろ。俺たちの話。そう言う事だ。こいつが卒業するまでお口チャック、な?出来たらご褒美やるよ。」
「え、ご褒美ですって!?」
菊ちゃんの口の前でチャックを閉めるようなジェスチャーをして見せた。
その仕草に菊ちゃんの頬は一気に赤く染まっていく。
「おい。何顔赤くさせてんだよ。」
急いで菊ちゃんの口から有栖川の指を離した。
「あぁら。恋人が嫉妬してるぅ。」
人差し指を立てながら腕をつついてくる菊ちゃんに便乗して「あぁら。俺って罪なやつぅ~。」と反対側の腕をつついてくる有栖川。
「て、てめぇら……。」
賑やかい帰り路…。
一瞬でもあの教室での出来事を忘れる事が出来た瞬間だった。
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