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そう言えば、菊ちゃん前に雑誌に載ってた二神をみてキャーキャー騒いでたな……。
実物みたらこの人、気がおかしくなるんじゃないか?
菊ちゃんは、自分の作ってきた衣装の袋を生徒会長に掲げて見せた。
「あ、生徒会長、この人がっ―――――「この度は、お忙しいところを、ありがとうございました。本当に助かります。」
生徒会長は、俺を押しのけるように前に出ると姿勢を正しながら、深くお辞儀をした。
「お礼なんていらないわよぅ!あたしが好きで引き受けたんだから。それで?この可愛らしい衣装を着るのは誰かしら?」
俺、ズタズタにされた衣装しか見てないから、ちょっとどんな衣装か気になる……。
菊ちゃんが持ってる袋の中を覗こうとしたら「あんた、何やってんのよ。見ちゃだめに決まってるでしょ。」と袋を反対側にされてしまった。
「けち。」
「どうとでもいいなさい。あなただってこの服の持ち主のライバルになるんでしょう。って、あなたの衣装もあたしが作ってるわけだけど……。あぁ!もう!今はとにかく見せられないから!早くこの衣装を着る子連れてきなさい!!」
最終的に逆ギレをして舞台袖に入っていってしまった。
生徒会長は慌てた様子で菊ちゃんの後を追いかけた。
で、結局、菊ちゃんの紹介忘れたし……。
「おはよう。武田君。来ないと思ったよ。」
背後から突然声をかけられ、驚いた。
誰かと思ったら、二神……ってなんか元気ないように見えるんだけど。
「お、おはよう。どうした?なんか元気ないみたいだな。」
「昨日のあれを目の当たりにして、夜寝られると思う?」
まぁ、そうだけど……。
「衣装は出来上がってると思うから、舞台袖に行ってみるといいよ。」
「え?」
目を丸くしている二神。
なんだ?この空気……。
「いや、菊ち……あの人はその道のプロだから、いざとなったらこんなの一夜で作っちゃうから。」
驚いた丸い目を一気に細めると「そうか。素晴らしい人なんだな。じゃあ行ってみるよ。」そう言って、俺の肩を軽くたたいて横を通り過ぎていった。
「―――――。」
ん?
今……なんか聞こえた気がした……。
通り掛けに囁いた二神の言葉に、無意識に背中の筋が凍った。
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