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倫太郎は見た
***
ある日の日曜日―――――
俺は、少し早くに目が覚めた。珍しく隣にいる男は目を覚ますことなくすやすやと寝息を立てている。
起こすと面倒だからそっとベッドから降りてトイレに向かった。
リビングを横目に通り過ぎようと思ったけど、テーブルの上に置かれている箱に目が留まり足を止めた。
たまに見かける怪しい箱。
時々恭平がスマホに夢中になっている時がある数日後にはこうやって箱が置かれている。
普段スマホなんていじらない奴が夢中になるくらいだから、きっと趣味の何か見つけたんだろう。
そもそもあいつに趣味なんてあったか?
『俺の趣味は倫太郎のまだ開発してない所を隅々までチェックして、俺にだけ反応してくれるようにするために―――――』
身震いを起こしながら首を大きく横に振った。
あいつの考えてる事は全く理解できない。
付き合い……付き合いだしてから、その……少しは理解しようと俺なりに努力はしている。
表情を見て今何を考えているのか、機嫌がいいのか悪いのか、ほんの少しだけどわかるようになってきたけど……。
「あの箱についてはどうしても聞く気になれないし、知りたいとも思わない」
と言うのも、箱がある日は大抵機嫌はいい。
いいんだけど、俺が帰ってきたときの甘え方??っつーのかなんつーのか、兎に角スキンシップがやたらと濃厚になる事が最近発覚した。
「箱の中身はなんだろな……。はっ!何言ってんだ俺」
トイレに向かって箱の事は忘れる事にした。
***
トイレから出るといつの間にかリビングに恭平が立っていた。
(あいつ何してんだ?)
俺がトイレに行っていると思っているのか、全く俺の存在に気づいていない様子の恭平。
極力音を立てず様子を伺った。
カサカサと何か音が聞こえてくると先程の箱が開封された状態で横に置かれた。
ついに恭平の手により中身は取り出された。
少し前のめりになりながら中身を確認してやろうと思った次の瞬間―――――
「盗み見はよくないなぁ。倫太郎?」
後ろに目があるのか!??
振り向きもせず吐かれたセリフにゾワリと背筋が凍った。
「あ、い、いや、俺は、べべ別にっっ」
「お仕置きしなきゃダメだな」
不敵に笑う横顔が見え、反射的に後退りをした。
手には怪しげな玩具が握りしめられている。
「き、恭平?」
「今日は俺もお前も休みだよな?」
「あ、ぁぁ……そ、そうだっけ?」
「予定は何もないよ、な?」
後ずさる俺、じわじわ近づいてくる恭平。
「な、ないけど、何かどっか行きたい気分かもなぁ……なんて……。」
「却下。今日は倫太郎に猫耳と尻尾着けて、首輪して紐垂らすんだから。」
「……イヤだ……。」
「新しい玩具だよー。ほら、ね?可愛いと思うんだけど。あぁやば……想像しただけで勃起した。」
「変態……。」
「うんうん。朝から最高に幸せ。早くベッドに戻るよ。なんでそんな後ずさりしてんの。」
「俺の本能がお前を拒否してる。」
「だぁめ。俺の全てを受け止めてもらうからっっ。」
最後の一歩で距離を詰められ腕を掴まれた。
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