とある事件

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マスコミは大いにこの事件を取り上げた。 『C学生連続失踪事件』 『ホルマリン漬けの遺体発見』 『博士の異常な性愛情』 『被害者は美少年美少女逹』 『4人目の失踪者、依然見つからず』 新聞紙面には大きな見出しで、そう書かれた。 理緒の遺体を連れ、博士は街から姿を消し、とある郊外へひっそりと移り住んでいた。 こんな形で君を私だけのものにしてはいけなかったはずだ。 その言葉とは裏腹に博士の全身に満ちる幸福。 月明かりのみの、ほの暗い部屋の中、理緒の遺体は水槽に沈められ、博士はそれを間近でボンヤリと見ていた。 やがて水槽の中に膝を抱えて座っている理緒の顔を撫でるように、ガラス越しの口づけをする。 窓から入る、月の細い光が青白い理緒の顔を美しく照らす。 綺麗だよ、理緒…… 博士の心は宝物を手に入れた充足感に満ちていた。 理緒は、博士にとって、標本の蝶になった。 昭和のある時代に起きた連続児童失踪事件の4人目の失踪者と容疑者は、年号が幾度(いくど)と変わった今も姿を消したまま行方が解らず、そっと静かに世間から忘れ去られていったのだった。 標本の蝶(その隷属の愛情・後日譚)/ENDimage=503496016.jpg ここまで読んで頂きありがとうございました。
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