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昭和のある時代、ある事件が世間を賑わせていた。
それは連続児童失踪事件と呼ばれ、美しい子供ばかりが姿を消していた。
生物クラブの生徒はその日、旧校舎から新校舎へ引っ越しの為、放課後に準備作業をしていた。
理緒は生物室の奥にある準備室から、埃のかぶった大きなガラスケースを見付け、しゃがんで手に取ると、指先でその埃を拭う。
「理緒君、何それ」
理緒の背後で少女の鈴のような声がする。
「蝶々の標本」
理緒は振り向いて言う。
「蝶々の標本? 気持ち悪い!」
「気持ち悪い?」
「気持ち悪いよ! 蝶の死骸だよ?」
「別に気持ち悪くないよ」
理緒は立ち上がって、標本をじっくり眺める。
「それ、要らない物だよねぇ」
と、少女は言う。
「どうして?」
「だってさ、本があるじゃん! 本で世界中の蝶々が見られるんだよ!」
「君はそう思うんだね」
「理緒君はどう思うのよ?」
「君達、お喋りしてないで、早く新校舎に教材を運んでくれないか?」
生物クラブ顧問の教師が2人に声をかける。
「ごめんなさーい!」
少女は舌を出す。
「先生、これ、要らない物ですか?」
理緒が教師に聞く。
「ん? どういう意味かな?」
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