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「卒業して、僕が側にいなくなったらお前はどうするんだ?」
「解らない、怖いよ!」
「きっと、お前は就職しても失敗ばかりで、また虐められる」
「嫌だ!!」
夏彦は涙ぐんで震えだす。
「夏彦、今日、これから僕んちに遊びに来ないか?」
「……」
「これから先の事、僕が考えてあげるよ。夏彦が誰にも虐められない方法をね」
「ほんと?!」
「本当だ」
理緒が微笑むと、夏彦は青ざめた顔で唇の端を上げた。
「ここが理緒君のお家?」
車が止まると車窓の内側にペタリと手をおでこを付けて、夏彦がたずねる。
「うん、そうだよ」
運転手が車を降り、2人が乗っている後部座席のドアを外から開けた。
「行こう、夏彦」
夏彦が車を降りて、キョロキョロしている後ろで、理緒は運転手に耳打ちする。
「今日、こいつを車に乗せた事は誰にも言わないでくれ」
「かしこまりました。坊っちゃん、くれぐれもお気をつけて」
運転手は小さな声で答えた。
理緒は今日、夏彦を殺すつもりで博士の研究所の敷地に彼を連れ込んだのだった。
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