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瑠湖(るこ)は甘利(あまり)のほうへと向き直っていった。
「甘利(あまり)ちゃん、ありがとね。それと迷惑かけてごめんね?」
それに答えたのは甘利(あまり)ではなく餡子(あんこ)だった。
「まったくよ! いきなり面倒起こすとか最悪よ?」
「ごめんなさい」
しゅんとした瑠湖(るこ)を見て、甘利(あまり)はよしよししてあげたくなって、でもそんなのはダメで、などと頭の中で葛藤を続けたのだった。
トラブルも一件落着したことでお腹がすいた女子高生一同だった。
瑠湖(るこ)はこの中でもすぐお腹のすくほうであった。
「お腹すいたね……」
それに餡子(あんこ)はため息をついた。
「先輩、さっき菓子パン食べてたでしょ?」
「え? 今日は食べてないよ?」
「そうだっけ? 先輩いっつも何かしら食べている気がするのよね」
「でしたら、あちらで何か買えばよろしいのではないでしょうか?」
レミリが市場の一角にある果物売り場を見て提案した。
「いいね! 買って食べようよ!」
だが、瑠湖(るこ)は微妙な顔をした。
「ちなみにお金は持っているの?」
この場の全員が顔を見合わせた。
ここは異世界である。
見た限り日本円が使えそうにない。
「でしたら、これでどうでしょうか?」
レミリが高校通学用バッグから取り出したのは、札束だった。
それを見た瞬間、餡子(あんこ)は肩を震わせて言った。
「ちょ、ちょっと、あんた! 学校に何持ってきてんの!?」
札束が5つ。500万円をポーチを持ち歩く感覚でバッグにいいれている女子高生がどこにいるというのだと。
アルバイトがただの社会勉強というレミリの桁はずれた金銭感覚が分かる。
「いけませんでしたか? これくらいは淑女のたしなみ……」
「そんなわけないでしょ!」
「餡子(あんこ)? お説教は後で聞きますから、いまはこれで何か買えないでしょうか?」
「……仕方ないわね、いま言い争っている場合じゃないわね。わかったわ。でもこんなんで本当に目的は果たせるのかしら……?」
前途多難だわと餡子(あんこ)はつぶやくのだった。
この異世界で探偵っぽいことをするのがそもそもの始まりだった。
いきなり雲行きが怪しくなってきた。
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