第二章 異世界と絵画

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 試しにこのお金を提示して物を買えないかどうか、果物を売ってるお店に聞いてみることにした。  だが、失敗した。  「は? 何だその紙は? 金もってねーなら邪魔だ」  この世界では紙幣はただの紙扱いである。  やはりこの国で流通しているだろう貨幣を手に入れなければならないという結論に至った。  お腹が空いて、瑠湖(るこ)はお腹の音が鳴り始め、少しぐったりしていた。  今日はスーパーの定休日でいつもの菓子パンを食べていなかった。  だから余計に元気が出ず、萎(しお)れた姿勢で歩いていた。 「ちょっと! しゃきっとしなさいよ! 先輩がそんなだと私までお腹空くじゃない……」  餡子(あんこ)もお腹の辺りを押さえて食べ物の置かれた店をチラッと見た。 「そんなこと言ったって……」 「でしたらどうでしょう? 一度元の世界に戻って、ご飯を食べてからもう一度戻ってくるというのは?」  餡子(あんこ)はその場で考え込んだ。  結局、事件や謎は都合よく起こることはなく、お腹が空くばかりだ。探偵が必要になることはなかった。  お金もないし、このままここにいても立ち行かない。  ならばいっそのこと元の世界に戻って、もう一度準備をい整え直せばいいという結論になった。 「わかったわ。戻りまし……待って!!」  餡子(あんこ)はある重大なことに気づいた。 「どうかしましたか?」  突然の大声にレミリは首をひねった。 「レミリ、あんた帰る方法はちゃんと説明書に載ってるから大丈夫って言ってたわよね?」 「はい、言いましたけれど……それが?」  ここに入る直前、絵画で異世界に移動する方法を説明書から調べた。  説明書といっても絵画の元の持ち主の書いた手記だった。  もともとあの絵画は同じ街並みの描かれた油絵で、異世界にいくつもある。  その中の一つなのだという。  それで絵画は絵画同士をつないで異世界を移動すると説明があったのだ。  トンネルみたいなものだ。  どの絵画とつながるかはランダム。  絵画に触れて念じることで移動できると。  絵画に『触れ』なければならなかった。  このことから餡子(あんこ)はある最悪の予想を思い浮かべたのだ。
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